司法書士の佐藤幹彦です。
今回は、遺産分割協議について書いてみます。
遺産分割とは?
亡くなった人が所有していた財産(相続財産)は、死亡と同時に自動的に相続人の所有となり、相続人が複数いる場合は、自動的に相続人全員の共同所有となります。
この、相続人全員による相続財産の共同所有状態を「遺産共有」といいます。
そして、遺産共有状態にある相続財産について、個々の相続財産の確定的な帰属を決定すること(相続人のうち誰のものにするか決めること)を「遺産分割」といいます。
遺産分割の方法
遺産分割の方法には、次の3つがあります。
- 遺言により指定する方法
- (遺言がない場合)遺産分割協議による方法
- 家庭裁判所の遺産分割審判・調停による方法
以下では、遺産分割協議について書きます。
遺産分割協議とは?
- 遺産分割協議とは、遺産共有状態にある相続財産について、その確定的な帰属(誰がどの財産を引き継ぐのか)を決定するために、相続人の全員で協議することをいいます。
- 遺産分割協議の当事者は「相続人の全員」です。相続人全員の協議により行わなければ無効です。
相続人の一部を意図的に除外して行った協議はもちろんのこと、存在する相続人を遺漏して行った協議も無効となります。 - なお、遺言による遺産分割方法の指定がある場合には、遺産分割協議を行ったとしても、原則として遺言の内容が優先されます。
- 遺産分割協議による遺産分割の内容(どの財産をどの相続人に分配するか)は、当事者間の合意により決定することができます。必ずしも法定相続分に拘束されません。
協議の前提として相続人全員の特定が必要
前述のとおり、相続人全員によらない遺産分割協議は「無効」です。
そのため、遺産分割協議を有効に行うためには、その前提として遺産分割協議の当事者となるべき相続人全員を特定する必要があります。
そして、誰が相続人となるのかは、必ず戸籍を基にして特定します。
また、不動産相続登記を含む各種の相続手続においては、遺産分割協議書とともに、相続人を特定するためにに必要な資料(戸籍等)の提出を求められることになります。
別の言い方をすると、相続人の側から書類提出先に対し「全ての相続人を特定した上で、相続人全員が参加して遺産分割協議が行われた」ということを資料によりきちんと説明できないと、相続の手続が進まない、ということです。
遺産分割協議書に相続人全員が参加しているかどうかを判断するのは、相続人の側ではなく、相続に関する書類の提出を受ける側です。
財産に関する権利義務を動かす以上、証拠もなく簡単に「はいそうですか」とはいきませんので、きちんと証拠となる資料を添えて手続をする必要があります。
つまり、相続人側から「これで全員だと思います!大丈夫だと思います!!」といくら言っても、言うだけではダメです。
したがって、遺産分割協議を行う場合には、前提として、必ず戸籍による相続人調査が必要となります。
専門家に御相談ください
相続人全員の特定が難しいかそうでないかは、多くの場合「結果論」です。
専門家であれば事前にある程度の見通しは立てられるものの、実際やってみたら意外と大変だった…ということもあります。実際のところ、戸籍の現物を確認してみないと、どうなるのかは分からないものです。
そして、既に把握されている相続人が本当に相続人全員なのかどうかは、戸籍をよく確認しない限り、専門家でもわかりません。逆に、司法書士等の専門家は、戸籍を確認して確実な判断を下すことができます。
司法書士が不動産相続登記の手続を受任した際には、必要な戸籍の確認を行い、相続人全員を漏れなく特定します。また、必要に応じ、戸籍収集を代行することもできます。
手戻りのない円滑な相続手続を進めたい場合は、ぜひ一度お近くの司法書士等の専門職へ御相談ください。
(もちろん、当事務所に御相談いただければ、誠心誠意対応します。)