相続登記申請の添付書類として当たり前のように作成している「相続関係説明図」ですが、実はその作成方法について詳細なルールが決められているわけではありません。
法務局が公開しているような典型事例ばかりであれば作成に苦労はないのですが、結婚・離婚を何度かされていたケースなど、相続人にならない人まで書くべきかどうか悩む場面がありました。その判断の際の根拠を探していましたが、実務書をめくってみてもこの点に関してはなかなか「これ」というまとまった記述が見つかりませんでした。
そこで、「登記秘書インターネット」で「登記研究」誌のバックナンバーに当たったところ、807号掲載の実務の視点(73)にまとまった記載がありました。ありがたい!
法務省の公式見解ではないものの、実務上は次の留意点を押さえておけば間違いないだろうと思われます。
要するに「登場する相続人と同順位の登場人物については全員を記載せよ」という趣旨でしょうか。
【留意点】
〇当該相続に関係する全ての相続関係を記載する
〇離婚・離縁・死亡等で相続人にならなかった者についても全員記載する
以下、備忘です。
【前提】
・相続を登記原因として権利に関する登記を相続人が申請する場合は、相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報を提供すべき【令7条1項5号イ、ロ、別表22の項】
・相続関係説明図は、登記原因証明情報のうち相続に関する戸籍書類の謄本として取り扱って差し支えない。【H17.2.25民二457】
・
→登記原因証明情報のうち、戸籍書類については、相続関係説明図を作成・添付することで原本還付の措置を受けられる。
→戸籍書類以外のもの(住民票、遺産分割協議書・特別受益証明書等)の謄本扱いにはならないため、これらについては別途原本還付請求の措置が必要。
【登記研究質疑応答等】
〇記載する範囲
・相続関係説明図には、当該相続に関係する全ての相続関係が記載されていることを要する。(357号81頁)
・相続関係説明図には、当該相続に関係する全ての者を記載すべきである。
(394号253頁)※離婚又は離縁した者であっても、当該相続に関係する者であれば、当然に記載する必要がある。
・相続関係説明図には、被相続人の死亡以前に死亡した子及び被相続人が離婚した者の氏名も記載すべきである。(439号128頁)
・被相続人の死亡以前に死亡した子がいる場合、又は被相続人が離婚した者がいる場合には、その死亡した子及び被相続人が離婚した者についても、その氏名並びに死亡した年月日及び離婚した年月日をも記載すべきである(807号115頁)
〇被相続人の記載事項
・被相続人の住所はその最後の住所を記載するが、登記簿上の住所と最後の住所が同一でないときはそれらを併記する。また、最後の住所が不明の場合には本籍地を記載する。(439号129頁)
〇作成者の記名押印
・相続関係説明図には、作成者の署名(記名)・押印は要しない。(410号83頁、430号174頁)