メッセージ ~「ふつうのことを、ふつうにする」~
司法書士の佐藤幹彦(さとうみきひこ)です。
私は、大学を卒業してから24年間、地元・南三陸町の職員として働いておりました。
2011年3月に発災した東日本大震災により、南三陸町は市街地にほとんど壊滅的な被害を受けました。当時の人口約1万7600人のうち800人超もの人々が津波の犠牲となられ、低地にあった建物はおよそ全て(住宅はもちろん、当時の職場であった役場もその他の行政施設も)流失してしまいました。
大津波によって大切な人を喪い、また、住まいを失った方々は、それまで当たり前のようにそこにあった平和な日常を根こそぎ奪われました。また、地域全体でも電気も水道も使えなくなり、橋は落ちて道路は寸断され、店もなくなり…と、それまでそこにあった「ふつう」を地域全体が失ってしまった状況でした。
震災により否応なく奪われたものは、その当事者にとっては、かつての日常の何気ない「ふつう」です。
かつての「ふつう」が今では全く「ふつう」ではなくなってしまったという現実が目の前に突きつけられるのは、当事者にとっては、第三者が想像する以上にとてもショックな出来事です。
私にとってもそうでした。
そんな状況下で、私は、発災直後は福祉担当として、何もないところから被災者台帳の整備や災害義援金や被災者生活再建支援金などの給付に携わりました。また、その後は法務担当として、復興を支える各種制度の構築などにも携わりました。
私が仕事をする上で心掛けたのは、「ふつうのことを、ふつうにする」という、とてもシンプルなことでした。
自分たちの仕事に対しては「震災で被害を受けたから」というのを言い訳にして仕事の水準を落とさないように。
困りごとを抱えて傷ついた方々に対しては、彼らなりの「ふつう」をできるだけ取り戻せるようにサポートする。
その過程を通じて、法律や制度を「ふつうに」理解して「ふつうに」適用する力を持つだけで目の前の人の困難を小さくできる場面が少なからずある、ということを身をもって学びました。
この「ふつうのことを、ふつうにする」が、私が司法書士を目指した原動力です。
司法書士法において、司法書士は「法律事務の専門家」とされ、その業務範囲は登記(不動産登記・会社法人等登記)のほか、相続関連業務、成年後見・財産管理、裁判関連業務など、きわめて多岐にわたります。
私は、司法書士として何か特別なことができるわけでも、何か圧倒的なスキルがあるわけでもないかもしれません。
しかし、「ふつうのことを、ふつうにする」の大切さと、それができないときの苦しさは、ふつうの人よりも多少は知っているつもりです。
今後は、司法書士という専門職の立場で「ふつうのことを、ふつうにする」を徹底し、地域の皆様の問題解決のための身近な相談先でありたい、と、そう願っています。
どんな小さなことでも、まずは御相談をいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
(2023年8月記)