司法書士の佐藤幹彦です。

今回は、「相続」という言葉についてちょっとだけ考えてみます。

民法第882条以下に相続についての規定が置かれていますが、実は相続そのものの定義がズバリ書かれているわけではないのです。

「法律用語辞典」を引いてみると…

手元の「有斐閣 法律用語辞典 第5版」で「相続」を引いてみると、こう書いてあります。

人の死亡によってその財産上の権利義務を他の者が包括的に承継すること。

出典:有斐閣 法律用語辞典 第5版

…法律の予備知識のない人が読んでもちょっと分かりにくいかもしれませんね。

この中の言葉を、次のように言い換えてみます。

  • 亡くなった人=「被相続人」
  • その財産上の権利義務=被相続人の財産上の権利義務=「遺産」「相続財産」
  • 包括的に承継する他の者=「相続人」
    ※亡くなった人と一定の関係を有する親族が相続人となります。

すると、こうなります。
「被相続人の死亡によって、被相続人の遺産を、相続人が包括的に承継すること。」

さらに、「包括的に承継する」を「丸ごと引き継ぐ」と言い換えると、こうなります。
「被相続人の死亡によって、被相続人の遺産を、相続人が丸ごと引き継ぐこと」

もう少しかみ砕いて言い換えると、こうなります。
「亡くなった人(被相続人)の遺産を、その一定の親族(相続人)が引き継ぐこと」


どうでしょう。少しは分かりやすくなったでしょうか?

なお、一般的に「生前相続」等という言葉が用いられることがありますが、これは「生前に自らの死後の相続手続が円滑に進むよう対策をしておく」という程度の意味合いで理解しておくとよいかもしれません。
(死亡以外の原因で相続が始まることはありません。)

相続の手続は難しい?

相続に関する個別の手続それ自体は、決して難しいものではありません。
不動産の相続登記も含め、少し勉強すれば誰でも自分で行うことはできます。

しかし、相続の手続に際しては、誰が相続人になるのか・相続財産の範囲はどこまでか・遺産の分割はどのような手段で行うべきか・どのような手続が必要か等を、個別の事案ごとに調査検討していく必要がある上に、相続に伴って各種の税金が発生するケース等、単に財産の名義だけ動かせばよいという話では済まない場面もあり得ます。

また、相続が発生する前に(生前に)対策をしておくことでトラブルを防いで相続手続を円滑に行えるような場合もありますし、多額の負債がある場合等、相続発生後早期の問題解決が必要な場合もあります。

そのため、個別のケースによって何がベストの選択肢なのかは変わります。

そういう意味で、私の立場で「相続の手続は難しいか?」と問われれば、相続の手続全般を漏れなく滞りなく適切に進めるのは「決して簡単なことではない」とは言えるかと思います(難しいかどうかは、人と状況によります。)。

相続についてお困りのことがあれば、まずは一度お近くの司法書士等の専門職へ相談してみることをおすすめします。